お灸いろいろ

しょうが灸

風はまだ肌寒いですが、三寒四温で徐々に温かくなってきましたね。

冷えを取るといえば「お灸」ですが、当院では患者様の症状・体格・コリの深さなどに合わせて、色々なお灸を用意しております。

今日は伝統的なお灸の一種である「ショウガ灸」を行いましたので、少しご紹介します。

目次

1.ショウガ灸とは

「ショウガ灸」とは、その名の通りスライスしたショウガの上に丸めたもぐさを載せて火をつけ、じんわりと患部を温めながらショウガの有効成分による効果を期待して行う「隔物灸」のひとつです。

肌の上から直にもぐさをひねって載せるお灸を「直接灸」と呼ぶのに対し、肌ともぐさの間に様々なものを載せることから「隔物灸」と呼ばれます。隔てるものとしては、他に「ニンニク」、「みそ」、「ビワの葉」などが良く用いられてきました。直接灸よりも火傷の心配が少なく、またショウガが熱せられるとじんわりとした香りが漂ってくるので、気持ちもほっこりしてきます。

ショウガには「ジンゲロール」「ショウガオール」などの有効成分が含まれ、血行促進や体を温める働きがあります。薬膳料理の主要な食材であるだけでなく、漢方薬の生薬としても「生姜」(ショウキョウと読みます)、「乾姜」(カンキョウと読みます)として重宝されてきました。加熱の仕方によって有効成分が変化するのですが、それはさておきショウガ灸の様子をご紹介します。

2.ショウガ灸の様子

背中から腰にショウガ灸を載せたところ
ショウガ灸スタンバイOK

上の写真はショウガ灸を背中から腰にかけて載せた所です。やや厚めにスライスしたショウガを少し温めて(←これがポイントです)、上にもぐさを大きめに丸めて載せていきます。スライスしたショウガをそのまま載せると、ひんやりして患者さんがびっくりしてしまうので、事前に必ず人肌程度に温めます。

ショウガ灸に火をつけるところ
お灸専用のお線香でもぐさに火をつけます

時間が経つとショウガがひんやりしてかえって体熱が奪われてしまうので、載せたら素早く火をつけます。お線香で小さく着火すると、すぐにもぐさが燃え出してもくもくと煙が上がります。ちなみに、写真では患者さんの背中のアップが映っていますが、産毛や肌の黒ずみ、毛穴が開いている様子が分かりますでしょうか?これらは全て「冷え」や「虚(弱っている、お疲れ)」のサインです。

この患者さんは肩甲骨の間にこうした所見が強く出ていましたが、これは器官が弱い人や風邪を引きやすい人によく見られます。また、腰部にも黒ずみがありましたが、慢性腰痛や寝不足の人に良く見られるサインです。これらの所見をショウガ灸で改善させることによって、風邪を引きにくくしたり、腰痛が出るのを防いだり、睡眠の質の向上を図っていきます。

もくもく
モックモクの煙が充満してすごいことになっております

だいぶお灸が燃えて黒っぽくなってきました。部屋の中は煙が充満しすごいことになっております…(写真ではなかなかお伝えできず残念です)。治療院では24時間換気システムに加え、空気清浄機と焼き肉用の煙吸引機のトリプルで煙対策を行っております(一般家庭では火災報知器が鳴ってしまうレベルなので、決して真似しないでください!)

煙が収まった様子
煙はそろそろ落ち着いてきました。土台のショウガがじんわり温まって熱を浸透させています

煙が落ち着いてくると、土台のショウガがじんわり温まり、ショウガの香りが立ち上ってきます。体にしっかり熱や有効成分が浸透すると、血行が良くなってきます。先ほどと同じアングルですが、肩甲骨の間の毛穴の開きや肌の黒ずみが落ち着いてきて、肌の色がきめ細かく明るい感じになってきました。施術終了後は、「息がしやすく鼻がスーッと通った感じ。腰も軽い」との事でした。

3.おわりに

このように、お灸は単に患部を温めるだけでなく、風邪の予防やこれから起こりそうな症状を防止するなど、未病を防ぐ効果や全身の状態を改善する効果が期待できます。今回ご紹介したショウガ灸は一般家庭で行うことは難しいので、興味がある方はぜひ治療院へおいで下さい。おうちで行いたい方にはせんねん灸でのセルフケアもお伝えしておりますので、お気軽にお問い合わせください。(セルフケア教室は週末不定期開催しています)

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