NHK「きょうの健康」で広告制限が特集されました

4/17(木)20:30に、HNKのテレビ番組「きょうの健康」にて「肩こり腰痛の悩み こんな広告に要注意!」というタイトルで、医業類似行為の広告制限が特集されましたが、ご覧になりましたでしょうか?(4/24深夜0時に再放送予定だそうです)

普段はあまり鍼灸などを利用しないという方にとっても、肩こりや腰痛といった症状はほとんどの方が一度は経験したことがあるのではないかと思います。また、近年は街の至る所様々な看板が目に飛び込んできますし、ご自宅のポストなどにそのようなチラシが入ってきて「行ってみようかな」と興味を持たれた経験のある方も多いのではないでしょうか。

番組を見逃した方もいらっしゃると思いますので、今回は「広告制限」についてご紹介します。少々お固い内容にはなりますが、肩こりや腰痛などでお困りの方が誤った情報でトラブルに巻き込まれることのないよう、怪しい広告や無免許業者の見分け方をお伝えします。

目次

1.医業類似行為とは

江戸時代までは、日本の医学=東洋医学でした。

明治維新後、「医制」という法律で「我が国の医学の主流を西洋医学と定める」と制定されました。当時の日本が手本としたのはドイツ医学でしたので、現在も医学の世界では「カルテ(診療録)」や「クランケ(患者)」などのドイツ語が医学用語として残っています。

一方、東洋医学は明治以降、医学の傍流とされ、「医業類似行為」すなわち「医療行為に似たようなもの」と呼ばれるようになりました。明治から昭和の戦後にかけて法律が整理される中、現在では東洋医学のうち「あん摩マッサージ指圧師/はり師/きゅう師/柔道整復師」の4つの国家資格が医業類似行為と認定されています。

当時は「欧米に追い付け追い越せ」のスローガンの元、日本の伝統文化や歴史は一段低いものとみなされ、奈良・興福寺の五重塔が数百円でたたき売りされて薪にされそうになったり、多数の伝統工芸・美術品が海外へ投げ売りされるなど、危機的な状況にありました。

東洋医学は禁止こそされなかったものの、その風潮は現在も尾を引いているようで、同じ東洋医学の流れを汲む中医学や韓医学が歴史ある伝統医療として国家の保護を受けているのに対し、日本では現在も「あはき=偉業類似行為」のまま今日に至っています。(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅうの頭文字をとって「あはき」と言います)

ちなみに、東洋医学のうち「和漢薬・漢方薬(湯液)」に関しては「薬剤師」、処方に関しては「医師」が担当するものとして、鍼灸からは分離されて制定されています。よって、日本国内で伝統的な東洋医学の「鍼灸(体表からのアプローチ)&湯液(体内からのアプローチ)」を行うには「医師」あるいは「薬剤師+鍼灸師」の国家資格が必要という、ややこしい制度となってしまっております。

2.国家資格保持者に課せられる「広告制限」

国家資格である医業類似行為4つに関しては、法律(「あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師等に関する法律」第7条、「柔道整復師法」第24条)により広告できる事項が厳しく定められております。この法律で許可された事項以外は、広告として掲載することができません。

(1)広告制限の内容

①施術者である旨、氏名、住所

②業務の種類

③施術所の名称、電話番号、所在地

④営業日・時間

⑤その他厚生労働大臣が指定する事項(小児はり、やいと・えつ、医師の同意による療養費支給申請が可能な旨、駐車場など)

いかがでしょうか?

「えっ、これだけ?」と驚かれる方も多いかもしれませんね。初めて治療院に行くことを検討する際には、院長の経歴や人柄、料金、どのような施術をされるのか、院内の雰囲気などは、患者さん目線としては正直気になるところではないでしょうか。

ですが、誇大な広告や過剰な営利目的で患者を惑わしたり、囲い込んだりすることがないよう、国民を保護するために厳しい規定が定められています。

※ちなみに、ここでいう「広告」とは「治療院看板、駅前看板、電柱広告、雑誌・新聞広告、新聞折り込みチラシ」など広く大衆の目に留まるものをいいます。院内の掲示物や、申し出に応じて一部の人に配布するリーフレット、パンフレット、学術発表、体験談、手記などは広告に含まれません。

(2)広告できない事項

▲施術者の技能、施術方法、経歴、流派

▲料金

▲適応症(~を治せます、効果があります、ビフォーアフターの写真など)

▲労災保険、自賠責保険

▲医学的根拠のない広告(難病が治ります、癌に効きます など)

これを見て、「あれ?」と思った方もおられるかもしれません。あちこちのHPやSNSではこういう内容をよく見かけることが多いですよね。実は、今までWEB関係(HP、ブログ、SNSなど)は誰でもアクセスできるわけではないものとして、広告制限の対象外とされていました。(ですので、現時点では当院の公式HPでもメニュー・料金、経歴、施術方法や治療院内外の雰囲気を伝える写真等は載せております)

ですが、近年はスマホの普及やQRコードによる公式サイト、公式LINEなどへのアクセスが一般的になったとして、つい最近、厚生労働省から「あはき・柔整広告ガイドラインに記載する内容(案)」の通達が出た所です。

ですので、今後はWEB情報に関しても、厳しい制限の元、患者様にとって必要な情報もお伝えしづらくなってしまう可能性もあります…

つまり、国家資格保持者ほど、広告制限の下、患者様が知りたい内容をどう届けるか苦慮しております。

一方、無資格業者に関してはこのような規定がありませんので、広告に関してもやりたい放題、野放し状態となっているのが現状です。(本来は、無免許による業自体が禁止されており、罰金以上の刑罰が規定されているのですが、取り締まりが追い付いていないのが現状です)

3.無免許業者による事故の例

消費生活センターに寄せられたほんの数例をご紹介します。

▲カイロプラクティック/頸椎スラスト法で頚髄損傷→首から下が麻痺し寝たきり(中枢神経障害による痙性麻痺)

▲ベビーマッサージ/0才男児が施術を受けた直後容体急変→死亡

▲タイ式マッサージ/成人女性が施術を受けた翌日容体急変→数日後死亡

以上は特に悪質な例ですが、これ以外にも「もみほぐしで強い圧をかけられた→肋骨骨折」「無知な無免許業者によるストレッチ→脱臼、靭帯断裂」「不適切な圧迫→皮下出血(青あざ)、揉み返し」「男性業者による女性患者へのアロママッサージ→胸や生殖器を触るなどのセクハラ被害」「頑固な腰痛でリラクゼーションサロンへ→癌の骨転移による症状を見落とされ、医療機関への受診機会を奪われた」など、枚挙にいとまがありません。裁判になると数年単位で時間も費用もかかりますし、生命に関わる事態や後遺症などでは被害額も甚大になりますが、無免許業者の大半は賠償責任保険に加入しておりませんので、業者に支払い能力がなければ結局患者様が泣き寝入り…という事態になってしまいます。

ですので、いかにも絶大な効果がありそうな広告や、興味・関心を引き付けるチラシなどが飛び込んできても、うのみにせず自分で判断することが自衛のためには大切になってきます。

4.無免許業者・誇大広告を見分ける目安

繰り返しになりますが、現在、日本の法律で「あん摩・マッサージ・指圧」をはじめとする手技療法全般を業として行えるのは「あん摩マッサージ指圧師」と「医師」だけです。鍼は「はり師」と「医師」、灸は「きゅう師」と「医師」、捻挫・脱臼の整復や接骨は「柔道整復師」と「医師」だけです。ちなみに漢方薬の販売は「薬剤師」と「登録販売者」、薬の処方は「医師」だけが可能です。鍼灸師という呼称をよく聞くのは、「はり師」と「きゅう師」をセットで取る人が多いためです。

ということは、つまり、それ以外の業者は全て無免許業者となります。

無免許業者がよく言うセリフとして「私は●×団体認定の資格を持っています」というのがありますが、それらは全て民間資格であり、国家資格なく業を行ってよい言い訳にはなりませんので、注意が必要です。民間資格の中には、「整体師」など「柔道整復師」と紛らわしい名称や、「漢方セラピスト」「東洋トリートメント」など「はり師」「きゅう師」と紛らわしい名称を用いて、あたかも国家資格を有するかのように誤認させる業者もありますので、特に注意が必要です。

(1)国家資格ではない無免許業者が用いる名称の例

骨盤矯正、整体、リラクゼーション、もみほぐし、エステ、アロマ、ロミロミ(ハワイ)、ベビーマッサージ、タイ式マッサージ、英国式リフレクソロジー、台湾式足ツボ、中国式推拿、気功、手かざし、オステオパシー(頭蓋仙骨療法)、カイロプラクティック、産後ケア、筋膜リリース、筋膜ストレッチ、スピリチュアル整体、足裏診断 etc…

このような業者のサービスを受け、健康被害に遭っても、泣き寝入りする羽目になることがほとんどです。くれぐれもお気をつけください。

※アーユルヴェーダ(インド)、ユナニ(アラビア医学)、中医学(中国)、韓医学(韓国)などは海外の伝統医療です。

(2)国家資格の範囲を超えて業を行っているケース

残念ながら、医業類似行為の国家資格保持者の中にも、自らが有する国家資格の範疇を超えた業を行っているケースがあります。

〇〇鍼灸接骨院:柔道整復師の院長が、はり師・きゅう師を雇って「柔道整復」と「鍼灸」を提供しているのでOK

×〇整骨・整体院:柔道整復師の資格はあるが、あん摩マッサージ指圧師の資格はない施術者が手技療法を提供しているのでNG

〇×鍼灸整体院:はり師、きゅう師の資格はあるが、あん摩マッサージ指圧師の資格はない施術者が手技療法を提供しているのでNG

…いかがでしょうか?ものすごく紛らわしいですね。一般の患者さんですと名称だけでは区別がつかないのではないでしょうか。厚生労働省はこうした事態を重く見て、施術所に用いることのできる名称制限を見直す動きがあります。

具体的には、病院と紛らわしい名称はもちろんNGですが、屋号の中に何をしているか全て含むこと(例:鈴木鍼灸院)、「接骨院」はOKで「整骨院」はNGなど、現在看板を出している施術所の中にも対応を迫られる内容も含まれているようです。

当方も現在は保健所の認可を得て「はりきゅうマッサージ ことりーふ治療院」と名乗っておりますが、「治療院」という呼称がNGになる可能性がありますので、その場合は名称変更を検討しなくてはなりません。今後の動きを注視していきたいと思います。

以上、長文にはなりますが、大切な話なので書かせて頂きました。最後までお読み頂きありがとうございました。

きょうの健康 - NHK
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