「孤独」が健康に与える影響

今週からついに関東地方も梅雨入りしましたね。

雨が続くと外出しづらくなりますので、一人室内で過ごす時間が増える人も多いかもしれません。皆様は一人の時間はお好きですか?

「普段忙しく外を駆け回っているから、梅雨時は予定も入らず、一人で読書や掃除などがはかどるから好き♪」

「雨のせいでお友達との外出がキャンセルに。どこにも行けず雨の音を聞いて家に閉じこもっているのは嫌い!寂しくて憂うつな気分になる…」

…など、人によって、状況によってまちまちかもしれませんね。

そこで今回は、「孤独」が「健康」に与える影響についてご紹介します。

目次

1.「孤独」とは

「孤独」とは、「人との温かいつながりが少なく、それを苦痛に感じている状態」です。

すなわち、たとえ一人でいてもそれが苦にならず、何か没頭できるものに打ち込んでいる状態は「孤独」とは言いません。

逆に、大勢の知人・友人に囲まれて一見孤独とは程遠い状態に見えても、儀礼的・表面的な付き合いや駆け引きに疲れきっていて、誰にも安心して本音を話したり、あるがままの自分では受け入れられずつらいと感じていたら、その人は「孤独」状態にあると言えます。

また、似たような言葉で「孤立」というのがあります。「孤立」とは、社会的なつながりがないか、乏しい状態にあることを言います。

例えば、定年退職後、仕事一筋でやってきた人が地域とのつながりが全くなく、趣味もなく、時間を持て余して家にずっといるとか、不登校がのお子さんがフリースクールや趣味の居場所などもなく、ひたすら自室に引きこもっている状態。あるいは、集団の中で阻害されるようないじめの渦中にあり、そこにいるのに挨拶すらされず透明人間のように扱われるといった状態は、「孤立」に当たります。

2.孤独が健康に与える影響に関する研究

孤独や孤立が健康状態にどのような影響を与えるのか、様々な研究結果が出ています。以下にその一部をご紹介します。

▲孤独は、「喫煙」「飲酒」「肥満」に匹敵、あるいはそれ以上の悪影響を与える

▲孤独は、「脳卒中」「心疾患」「認知症」などの発症リスクを高める

▲ゆえに、孤独は「死亡リスク」を高める大きな要因の一つである

…こう聞くと不安になりますね。他にもたくさんの不調や病気のリスクを高めるという報告があります。事態を重く見たイギリスでは「孤独担当大臣※」を設置して、現代社会に生きる人々の健康と幸せを脅かす「孤独」について国が対策を講じています。(※2024年に統廃合)

そもそも、ヒトは生物学的に見ると群れを成す社会的動物であり、トラやサイなどの単独行動をとる動物とは異なる生き方を確立してきた種に属しています。飛躍的に世の中が便利になって、誰にも会わず、会話一つしなくても買い物や旅行の手配ができる時代。群れずとも生存できる時代になりました。とはいえ、数万年かけて進化してきた種の本能はそう簡単には変わらず、ヒトはつながりを求める欲求が強い為、それが満たされない孤独による悪影響を受けやすい種族であると言えます。

「いいやそんなことはない。私一人でも平気だし、むしろつながりなんて煩わしい」という人もいるかもしれませんが、絶海の孤島に遭難した人がペットを飼って話しかけた逸話や、直接のつながりが希薄な社会でもSNSなどの「間接的につながる」ツールが普及している事実、会話タイプのAIに話しかけて心を満たそうとする人が多い事からも、ヒトにはなにがしかのつながりを求める本能が備わっていると言えるでしょう。

3.「よいつながり」で心身の健康を保つ ~チューニング神経を育てる~

「孤独の悪影響と、つながりが大切なことはわかったけど、具体的にはどうすればいいの?」という疑問が浮かびますよね。

「私は独身で一人暮らしだし…」「人見知りで友達少ないし、あぁもう私孤独から抜け出せそうにない」「せめてペットを飼いたいけど、都会で動物を飼えないし…」などと頭を抱えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。

つながりというと「家族」や「恋人」「仕事仲間」などが浮かぶかもしれませんが、実はもっと軽いものも含まれます。

〇習い事やスポーツジムで一緒の人と、広くて浅いお付き合い(挨拶~気が合えばたまにお茶程度)

〇ご近所の方とは会ったら会釈くらいはする

〇宅配業者さんや郵便局員の方から荷物を受け取る際、目を合わせて「ありがとうございます」と声を出す

〇毎回利用する定食屋さん、クリーニング店などの店員さんと「挨拶+天気などの無難なネタ」を話す

〇行きつけの店を作り、店員さんが顔を覚えてくれて「いつもありがとうございます」と言ってくれる

〇通勤・通学途中にいつも昼寝している猫と目を合わせるうちに、猫が慣れて何となく逃げなくなった気がする

〇いつもの散歩コースでワンちゃんとすれ違う時、「今日も元気そうだな」などと微笑ましく観察する

〇通りがかりに「このお庭の見事な花のつぼみ、あと何日で咲くかな」とさりげなく観察する

花屋で見かけて一目ぼれしたトルコ桔梗。1週間かけてつぼみが見事に開きました

…どうでしょうか?

「つながりを作らなきゃ!」と構えてしまったり、必要以上に気負いがあると、かえってぎこちなく不自然になったり、距離を詰めすぎて相手や自分が苦しくなったりしがちです。

自分にとって「脅威でない」「安心・安全」「好ましい」と思う対象と、程よい距離感でつながりを作ることが心身の健康に良い影響を与えます。その際、「つながり」を活性化させる腹側迷走神経は主に顔面部を司っているため、「目」で見て「口・声帯」で声を出し「表情筋」でにこやかに敵意がない事を伝えることが、孤独から脱却し、つながりや安心感を楽しく受け入れる準備体操となります。

「過去に対人関係のトラブルがあってから人が怖くて緊張してしまって…」という方も、下へ行くほどハードルが低くてできそうな気がしませんか?(観察対象は犬に限らず、スズメでも虫も鳥でも、ご自分の好きなものでOKです)

もちろん、人の場合は相手の都合や好ましい距離感の差というものがあるので、実際の人間関係は「間」の取り方が難しい部分もあるのですが…。基本は簡単な所からスモールステップで慣らしていくというのが原則となります。

もし、誰にも言えない深刻な悩みや、個人的な事柄を誰かに聞いてほしいと感じておられる場合は、話す相手や状況を選んだ方が良い場合もあります。信頼関係がそこまで育っていない雑談程度の関係性の人にオープンなカフェなどで「ここだけの話にしてほしいんだけど…」と勇気を出して打ち明けた結果、つい言いふらされてしまったりして、かえって傷つくなどという場合もあるためです。

話を聴く訓練を受けたカウンセラーや、特定の知識から専門的なアドバイスをくれる医師や弁護士など、様々なプロの中から、ご自分の今のニーズに合った人や場所を選ぶことで、抱え込んでいる悩みが軽くなったり、思考・感情が整理されたりすれば、胸のつかえが軽くなったり、人生の分岐点における選択もしやすくなるかもしれません。

当治療院でも、心をほぐす雑談から心身の健康に関するお悩みまで、守秘義務に則って対応しております。もし、今ちょっと孤独感やさみしさを感じていて「誰かにちょっと聞いてほしいな…」という時は、どうぞお気軽にお越しください。

お体の施術だけでなく、お話に耳を傾けることでご自分の体や心と向き合うお手伝いができれば幸いです。

4.おまけ/口下手で言葉のコミュニケーションが苦手な方へ

ここまで「孤独」の悪影響と「つながり」の重要性を並べましたが、元々口下手で寡黙な方や、言葉でのコミュニケーションが苦手な方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方には、「皮膚で感じるつながり」がおすすめです。例えば、手をつなぐとか、シャンプーの上手な美容院で髪を洗ってもらうとか。もちろんマッサージを受けるのもおすすめです。つながりが乏しい状態にある方は、体が緊張状態で交感神経が高ぶりがちな傾向にあり、皮膚もこわばったり冷えて硬くなっていたりします。

温かくなるこの季節、皮膚のこわばりを取るにはオイルマッサージが特におすすめです。体の緊張がゆるむと、心もリラックスして、お通じや睡眠の質も良くなりますよ。(皮膚を露出することに抵抗がある方には、あん摩指圧もとても良いです)

オイルマッサージはこわばった心身の緊張緩和におすすめです
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