女性ホルモンについて(3)

女性ホルモン

だいぶ前に、女性ホルモンについての概要と、女性ホルモンが引き起こすトラブルについて書きました。

かな~り空いてしまいましたが、今回はその続きから。

目次

2.性成熟期のトラブル

東洋医学では「女性は7の倍数で体が変わる」という言い伝えがあります。

東洋医学のバイブル『黄帝内経』では、女性は「7歳」で歯が生え替わり、「14歳」で一応子供を産める状態になるが、女性としての体が成熟し、真に充実した機能を発揮するのは「21~28歳」。次の7の倍数である「35歳」からは徐々に衰え顔にはシワ、髪には白髪が見え始め、次の倍数の「42歳」で子供を産むことが難しくなると言い伝えられています。(ちなみに男性は8の倍数です)

実際に現代医学でも、35歳以上での出産を高齢出産と定義しております(日本産婦人科学会)。また、42歳を過ぎると自然妊娠率が低くなるというデータもあるので、古典に書かれていることはあながち的外れでもないかもしれません。

つぼみから花が咲き、種が実る植物の一生のように、女性の体は性成熟期に開花を迎えます。どのお花もきれいですね(ひまわりは向こうを向いていますが…)

①子宮内膜症

性成熟期は女性としての体が完成し、性ホルモンの量や月経周期が安定してきますので、思春期に不調が強かった人でも、年齢と共に徐々に楽になってきたという声が増えます(※ただし個人差が大きいため、大人になっても毎月苦しむ方もいらっしゃいます)。一方、女性ホルモンに毎月体がさらされることで、月経やホルモンに関連した病気が増えてくる年代でもあります。

「子宮内膜症」はそのひとつで、本来は子宮に作られるはずの内膜が、卵巣・腹膜・その他臓器などの「子宮外」で増殖してしまう病気です。

子宮は受精に備えて子宮内膜を厚くしますが、受精が起こらないと増殖した子宮内膜は剥がれ落ちて体外へ排出されます。これが月経ですが、子宮内膜が子宮以外で増殖するという事は、出口がありませんので、子宮内膜を構成する血液等が行き場をなくしてしまいます。毎月の月経周期のたびに、ホルモンに反応して内膜が増殖しては血液がたまる一方なので、痛みや機能不全を起こします。

▲卵巣で増殖すると…チョコレート膿胞(卵巣内に古い血液が溜まって、チョコレートのように見える)

▲腹膜で増殖すると…周辺組織の圧迫(無症状~痛み、重苦しさ、便秘など)

▲肺で増殖すると…月経随伴性気胸(子宮内膜が肺や横隔膜上で増殖し、肺や胸膜を圧迫。破裂すると気胸による胸痛、空咳、呼吸困難など)

②子宮筋腫

子宮筋腫とは、子宮の壁にできる両性の腫瘤です。腫瘤、つまりできものというと「ガンみたいなもの?怖い…」というイメージがあるかもしれませんが、悪性腫瘍とは異なり、無限に増殖して生体を消耗させたり、転移したりして命を脅かすものではありません。

とはいえ、女性ホルモンの分泌に伴って少しずつ大きくなっていきますので、進行すると握りこぶし~何と人頭大にまで増殖してしまう人もいます。「そんな大きいものがお腹の中にあったら、さすがに気づくのでは…?」と思いきや、意外と症状が軽い人や自覚症状がない人もいて、気づかないまま大きくなったりします。大きくなって周辺組織を圧迫するなど、支障をきたす場合は手術で子宮摘出します。なお閉経後は女性ホルモンの作用を受けなくなるため、自然に縮小する人もいるようです。

③子宮頸癌

子宮頸がんとは、その名の通り子宮下部の子宮頸部に発生する癌です。こちらは放置すると命を脅かす「悪性腫瘍」の一種です。

たばこによる肺癌、生活習慣や加齢による大腸癌、放射線による白血病など、癌には様々な原因がありますが、子宮頸癌は「ヒトパピローマウイルス」感染によって起こる癌です。

性交渉によるウイルス感染が原因となるため、30~40代の性成熟期の女性に多く発生します。子育て世代の女性の命を脅かすことから、別名「Mother Killer(母親殺し)」と呼ばれる恐ろしい癌です。性交渉前のワクチンが予防に有効です。

④卵巣嚢腫

卵巣嚢腫とは、卵巣内に袋状のしこりができる病気です。子宮内膜症で紹介した「チョコレート膿胞」も、卵巣嚢腫の一種です。

袋の中には漿液、粘液をはじめとして様々なものが入っています。変わったところでは、皮膚や爪、髪など人体の一部が入っていることもあります。受精卵でない卵子が、何らかの原因で人の体を作ろうと分化・増殖してしまうことによって起こるようです。卵巣が腫れますので、増殖が著しいと破裂の危険があります。その場合は命に関わりますので、破裂する前に卵巣摘出します。

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