ヨモギのお話

東洋医学といえば、「はり」「きゅう」「湯液(漢方薬・和漢薬のこと)」ですが、これらの柱のひとつ「お灸」でもちいられるもぐさの原料はヨモギです。ヨモギの葉の裏側に生えている毛茸(もうじょう)と呼ばれる白い産毛のような線維を、数々の工程を経て分別し、フワフワとした薄黄色のもぐさが作られます。
道端や庭の隅など、どこでも見かける植物ながら、実は様々な効能のあるヨモギ。今回はそんなヨモギの魅力を少しずつご紹介します♪
1.和歌にも詠まれたヨモギ
ヨモギという植物は、日本人の生活に古くからなじみがあり、医療・食事・生活など様々な場面で大いに活用されてきました。古くは奈良時代から薬草摘みが盛んに行われてきたという記録もあり、和歌にも「もぐさ」をモチーフにした歌があります。
「かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」(藤原実方朝臣)
「このように 口に出して言うべきか、いやとても言えない。あなたはそうとも知らないでしょうね、伊吹山の もぐさを差すときのように 燃える私のこの思いを」というような意味だそうです。秘めた恋心をもぐさに例えて詠んだこの歌は、百人一首にも選ばれています。
ちなみに伊吹山はヨモギを始めとする薬草の名産地です。
現在も「伊吹もぐさ」といえば良質なもぐさとして有名で、当院でも伊吹山のもぐさや入浴剤を取り扱っております。
2.食べておいしい草もち作り
ヨモギといえば、和菓子屋さんに必ずある「草もち」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?

我が家の薬草園(というよりはただの庭ですが)でも、今の時期取り切れないくらいのヨモギがわんさかと生えてきています。
柔らかい新芽は草もちに、もう少し育ってしまって線維が丈夫になった葉は薬草蒸しに使用しています。

今回は初めて、子供と一緒に「かんたん・白玉草もち作り」に挑戦しました。
①てのひら一杯に集めたヨモギを選別し、きれいに洗って土や枝などを取り除く。
②ヨモギの新芽をゆでて、すり鉢ですりつぶしてから、白玉粉と一緒にこねこねと混ぜる。
③熱湯で数分ゆでて、浮かんできたらすくって冷やしてできあがり。あんこやきなこをかけていただきます。

「おいしい!でもなんだか色がお店のより薄いねぇ」と子供。
売っているような濃い鮮やかな深緑色にするには、大量に採る必要があるんだなぁ…と、自分で作ってみて初めて気づきました。
ウグイスもちのような淡い緑になってしまいましたが、味の方はなかなかで、春の香りが楽しめました。
ちなみに、ヨモギを食用として摂取した場合の作用は、解熱と血圧下降。
沖縄県では「サギグスイ(下げる薬)」と呼ばれ、葉っぱをソーキそばやヤギ汁のトッピングにどっさり入れたり、炒め物にしたりして、大量に食べるそうです。キク科の植物なので、春菊のような味と香りで食べやすいとか。天ぷらやお浸しにしてもおいしいかもしれませんね。
日々の食事から経験的に健康管理や病気予防を図る「おばあの知恵」の食文化。沖縄に旅行する機会があれば、ぜひ挑戦してみたいです。
※注意/青々と育ち過ぎたヨモギの葉を高温で長時間加熱すると、「ツヨン」という揮発性の神経刺激成分が空気中に充満し、気分が悪くなったり興奮・幻覚などの神経症状が出たりすることがあるそうです。通常の調理では長時間ぐつぐつ煮ることはあまりないですし、日本の品種であるカズサキヨモギにはさほど含有量が多くないので、たいていは心配いりませんが、芳香蒸留水や精油抽出の際は注意が必要です。しっかり換気しながら作業しましょう。
3.つくばみらい市の銘菓「よもぎの華」
おまけとして、患者様から教わった和菓子のおいしいお店をひとつご紹介します。
「大久保利通商店」(つくばみらい市)の「よもぎの華」です。
摘みたてのヨモギがたっぷり詰まった草餅をはじめ、色々な和菓子を毎朝手作りで8時から販売しているこのお店、大変な人気で売り切れ次第終了だとか。丸めた普通の草餅もあるのですが、こちらのよもぎの華は中にあんこが入っていて、お花のようなきれいな形に整えて個包装してありますので、お花見などに持ち歩いたり、どなたかへのちょっとした差し入れにもいい感じです。桜餅や豆大福、おかきなどもおすすめ。
お出かけ日和のこの時期、ドライブがてら、ぜひ足を運んでみてくださいね。
おいしくてお腹にも優しい和菓子は、花見のお供にピッタリです♪

